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映画『武士の一分』て、、、???

2007年制作された劇場用映画で、スマップの木村拓哉さんが主役を立派に果たしておりました。若い方がこの映画を見て何を感じられたでしょうか。

武士道や武家の掟を理解しないと分かりにくい感情も含まれているのですが。

 

物語は貧しくとも平和に暮らしていた若夫婦に訪れた不幸に始まります。

 

毒味役(主君の口に入る前にまず食し主君を毒殺、病から守る役目)の若侍が不運にも毒を食らい失明してしまいます。侍として失明すれば役に立たず碌を奪われる(失業して給料が出なくなる)恐れもあり、それを心配するあまり若い妻は上役を頼り上に取りなしてもらうよう相談します。しかしその上役は己の欲望でその若妻をもて遊びます。若妻は視力を失った主人に代わり家を守らねばならない妻の義務に自分を捨て、その理不尽に耐えます。

その噂が件の若侍に聞こえ、己の腑甲斐なさを嘆きつつも妻を離縁してします。 全ての事情を知る年老いた中間(武家などに仕える従者、家来)は愛し合っている二人の結末をどうすることも出来ず見守ります。盲目の若侍は嘗ての師匠を頼り剣技を工夫し、妻を辱めた上役と果たし合います。言うまでもなく上役もひとかどの武士、盲目の剣士が容易く倒すことの出来る相手ではありません。苦戦の末一念を持って相手の片腕を落とすのです。老家来が駆け寄りとどめを勧めますが若侍は”思いは果たした。これで良い。”と、その場を立ち去ります。

 

ことも落ち着いたある晩、老中間の用意した夕餉の膳に向かいました。ハシをつけたものを口に運び味わうと、それは正に離縁を言い渡した妻の味だったのです。年老いた中間は全てを承知の上すでに実家もなく、行き処のない妻をかくまいながらそっとその日を待っていたのです。料理を味わった刹那若侍は全てを理解しました。その後の三人に多くの言葉は必要ありませんでした。切られた上役も自力で帰宅し、調べに対して一切の申し立てもせず、

残った片手で腹を切って果てたと言う事です。従って、その後若侍には何のおとがめもなく若夫婦はお互い寄り添い幸せな生涯を送った事でしょう。

 

登場人物各々が武家の一分を果たしたのです。夫の義務、妻の義務に家来の忠義、己で仕出かした不義の始末を切腹で果たした上役。これが武家の分をわきまえた者達おのおのに課せられた一分なのです。

 

封建時代の武家社会における掟ではありますが、それぞれそれを誇りとし義務の枠を超越した厳しくつつましく、哀しいまでに一途な心で義を貫き生きていたのです。最期に、若侍が命を的に守った主君からの感謝の意はただの”大義”(ご苦労さま)一言だったのです。

 

塾長 成嶋弘毅